2発目 ドクター・キリコ
2004年10月14日
ドクター・キリコは知っているだろうか? 1998年に、青酸カリ入りのカプセルを東京の女性に送り、最後には自殺した、彼のことである。今日は彼のことを思い出さずにはいられない日だった・・・。
私は物心ついた頃から化学に興味があり、中学二年の時には固体の水酸化ナトリウムが、高校一年の時には濃塩酸が、家にあった。もちろん自分用である。何に使ったかといえば、実験に使ったのである。水素を発生させたり、たんぱく質を溶かしてみたり。水酸化ナトリウムは友人のおばの薬局から友人に頼んで購入してもらい、塩酸は高校入学祝いということで、父に買ってもらった。親も友人も、15、6のガキがそんな劇物を持っていることがどんなにすごいことであるか、化学に興味がなかったので分からなかったようである。
このふたつの薬品、片方だけだと大変な力を発揮するのに、混ぜたらただの塩になってしまうというのが面白い。まあ、このあたりが化学の醍醐味だろう。大学入学時から2年間は、化学を専攻していたが、結局は生化学に変えた。生体に関係しない有機化学が嫌いだったからだ。私はもともと生体内での化学反応に興味があったのだが、生化学は難しいよと皆が言っていたので、なかなか専攻を変更をしなかったのだ。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、今日、実験室でバッファのpHを調整するために、水酸化ナトリウムと塩酸を探していたら、薬品棚の奥の方に、なにやら古びたビンがあった。近くに寄せてよく見てみると・・・

ヘェ〜、POTASSIUM CYANIDE ね。ただのシアン化カリウムじゃん。ふーん。それって、青酸カリか。えっ??
そう。青酸カリが普通にほかの薬品と一緒に置いてあったのだ。量は400gぐらいあっただろうか。人の致死量が0.2gぐらいだから、まあ、かなりの量だ。実験に使うんだろうけど、こんなところに普通に置いてあっていいのだろうか。日本だったら、劇物なんて書いてある薬品庫に入っていそうな気がするのだが・・・。これなら、誰でも持っていけてしまう。しかも、部屋の反対の方には、塩酸が3Lぐらいある。これを混ぜでもしたら・・・・かなり怖いことだ。
いやあ、怖いですね。インターネットで青酸カリなどと入れて検索すると、毒性の説明のページやら、入手方のページやら、事件のページやら、自殺系のページやら色々出てくる。その中に、ドクター・キリコがどこかにかならずある。
実は、私は小学校3年の時初めて自殺をしたいと思い、遺書まで書いた。遺書は親に見つかり、没収後、処分されてしまったようだ。今でこそ普通であるが、高校の時には自殺を強く意識していた。もちろん、完全自殺マニュアルも購入した。よって、自殺願望というのは理解できる。ただ、私は化学薬品への敬意というか、畏れというか、そういうものは持っていた。つまり、
薬品で自殺すんじゃねー
薬品は、自殺をするためにあるものじゃないんです。自分のウンコでも食って氏んでください。ましてや、薬品で犯罪を犯すなど、もってのほか。化学者全員を馬鹿にする行為だ。
とまあ、こんな感じです。全然コラムになってない・・・。最後に、どうして青酸カリで逝ってしまうのか、そのメカニズムを。
服用後、胃酸により、 HCN(青酸ガス)が生成し、最終的には、CN- (cyanide ion)
となって、血液に取り込まれ、全身に行き渡る → 細胞内のミトコンドリアの電子伝達系の、ComplexW(cytochrome c oxidase サイトクロームcオキスィデイス)を阻害 → O2 consumption が阻害され、anaerobic respiration が起こり、lactic acid の蓄積による細胞死 → 呼吸中枢の神経細胞の活動電位(action potential)が発生しなくなる → 神経伝達が行われず、横隔膜が停止 → 窒息死