5発目 毒蜘蛛にご用心
2006年6月14日





アメリカにいると、幽霊とかそういうものがあんまり怖くない気がするのは私だけでしょうか。日本では墓場の近くを通ったり(なんであんなに怖そうな卒塔婆をたくさん立てるのでしょうね)、人が何年も出入りしていないような崩れかけの民家を見かけたり、怪談を聞いたりした時など、ちょっと寒気が走ってしまうのは仕方ないことです。

アメリカにいると、こういうものを見かけたり聞いたりすることが少ないし(ハワイにある日本人の墓を見たときは少し怖い気がしたような気分になりましたが)、第一、こんなことより怖いことが盛りだくさんなのがアメリカです。猟奇殺人、銃殺、レイプ、英語ができないことによる冷や汗ダラダラの状況と、きりがありません。こんなものに毎日囲まれていたら、ボロ屋を見つけてもどうってことはないし、怖い話を聞いても、次の日のリーディングがあるので、それどころではない、となるわけです。

しかしながらよくよく考えてみると、この地理的な要因も大きく関与していると思われます。ここはカンザスです。しかもローレンスです。凶悪な犯罪は起こるはずもなく、夜中に一人歩きをしても、せいぜい心配なのはレイプぐらいです。こうなってくると日本にいたときより平和ボケしてしまい、危険を察知する能力すら低下してしまっているのでは、とそっちのほうが不安になってくるといった状況です。

だらだら書いてきましたが、何が言いたかったというと、アメリカには日本にはいない毒グモがいるのです。そしてこれが、レイプと英語ができないことによる冷や汗ダラダラの状況、の間ぐらいに位置するのでは、と最近思うようになったのです。備えあれば憂いなし。日本語で説明してあるページがほとんどないので、今日はこの毒グモについて簡単にまとめておきたいと思います。



こちらがその毒グモになりまーす。



この毒グモの名前は、brown recluse spider、学名をLoxosceles reclusa と言います。日本語で言うなら、ブラウンレックルースとでもしておけばいいでしょう。随分存在感のある蜘蛛ですねぇ。足がスラっと長いからでしょうか。生息している地域は詳しくはわかりませんが、中西部から南部に多く分布しているようです。ここで、ひとつ確認しておいて欲しいことがあります。上の写真をクリックすると大きい写真が見られますから、ちょっと見てみてください。写真では頭は上を向いています。よーく見てみると、バイオリンを逆さにしたような模様が見えるはずです。



これがポイント!



もしあなたが存在感のあるクモを見つけて、その背中をよく見てバイオリンの模様があったなら、それはブラウンレックルースです。もし家の中で見つけた場合は、外に逃がしてあげようなどと馬鹿なことは考えずに、安全な方法で潰すなどして殺処理してしまいましょう! 大変おとなしいクモで、変なちょっかいを出さなければあまり動きもせず、殺すのは比較的簡単です(私の戦績は、2戦2勝の負け知らず)。このクモは厄介な毒を持つクモなので、外で見つけたら無視、家の中で見つけたら処分です。暗いところが好きなようなので、クローゼットの中やトイレなどに潜んでいるかもしれません。冬は冬眠していて、5月から10月にかけて活動するようです。

次にこのクモの毒についてです。毒の成分でもっとも怖いのが、Sphingomyelinase D という酵素だそうで、リン脂質のひとつである Sphingomyelin を分解してしまいます。その結果、ひどい場合には刺された部分が虚血による壊死を起こします。つまり、刺されるとその部分が腐ったようになることがある、ということです。これは確かに怖いですね。

とは言っても、刺された人全員の刺された部位が腐ったりするわけではなく、これは体質にも、入った毒の量にも関係するので、なんとも言えないのです。とあるサイトでは、刺されたケースの1割ぐらいで壊死を起こすと書いてありました。ほとんどの場合は刺されても気づかずに治ることも多いようです

ただし、このクモに刺されたことがはっきりと分かっている場合は、すぐに病院へ行ったほうがよさそうです。ましてや全身症状が現れたり、治癒が以上に遅い場合は、急を要すると思います。Google で、brown recluse spider bite などと入れて画像を検索すれば、嫌って言うほどの量の壊死の写真が出てくることでしょう。こうなる前にどうにかしたいものです。

応急処置として、患部を冷やす(毒は酵素なので、温度を下げると活性も下がる。また、温度を下げることによって炎症を抑える。)といいそうです。病院では、cortisone-type hormones などが投与され、中には電気ショックを与えて、酵素の水素結合を切って、2次構造、3次構造をメチャメチャにして、コーファクターとしていくっついている金属イオンを剥ぎ取る、なーんていうのもあるそうですが、本当に効くのかなぁ? まあ、効果的な確立された治療法はないそうですが、滅多に死ぬことはないとのことなので、とりあえず安心ですね。

このクモについては、以前お世話になっていた山口県のT.Y.氏から聞いて知ったのですが、彼女のアパートに遊びに行ったとき、彼女がバスタブにこのクモがいると言い出して、結局そのときはクモが逃げてしまって見られなかったのですが、今日私のアパートにいたんですよ。へこむなぁ・・・。バスタブの排水溝のそばにいたんです。バイオリンを肉眼で確認して、「あーあ」となり、写真を撮ってから(写真じゃちょっと分かりづらいかも知れないですけど)、ティッシュで潰して殺しました。



はしゃぎ過ぎで、足が多少短くなっているご様子



そういえば、前に住んでいたアパートで、手かどこかが、何かに刺されたようになって、しばらく腫れていたことがあったのですが、色んな写真を見ていたら、このクモにやられた感じがしてきたなぁ・・・。治癒には数週間を要しましたが、その程度で済むこともあるってことで、こんな恐ろしい毒グモがいるから、カンザスに行くなんて絶対やだ、なんて言わないで下さいね。カンザスの外はもっと怖い凶悪犯罪で満ち溢れていますから。まあ、カンザス以外にもこのクモはいますけどね。となると、犯罪の少ないカンザスはお買い得かも?

ちなみに、このクソ蜘蛛、1週間ぐらい前にも壁にいたんですよ。ヤレヤレ。

終 了